週刊ビッグコミックスピリッツで吉田戦車さんの「伝染(うつ)るんです。」や江川達也さんの「東京大学物語」など数々のヒット作を担当してきた漫画編集者の江上英樹さん(66)。編集者としての人生に大きな影響を受けた言葉があると言います。駆け出しの頃に聞いたその言葉とは――。
入社3年目に転機、「伝説的漫画編集者」との出会い
作品を読んでひかれたら、すぐに動く。徒手空拳でも構わず、作家に接触を試みる。「普通は企画書をきちっと作ってから行くもの。でも僕は、作品が好きという気持ちがあれば動いちゃう。まずやってみる」
振り返ってみれば週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で吉田戦車さんが「伝染るんです。」を始めるきっかけも、江川達也さんが「東京大学物語」を始めるきっかけも、そうして作った。
コミックバーガー(スコラ)の連載「戦え!軍人くん」があまりにおもしろく、すぐに吉田さんの連絡先を探った。コミックモーニング(現モーニング、講談社)でデビュー作「BE FREE!」の連載を始めていた江川さんにはツテをたどって接触し、口説き始めた。
東京大学文学部を卒業し、1982年に小学館に入った。転機は入社3年目。オーディオ雑誌の編集部から、80年に創刊したばかりのスピリッツ編集部に移った。そこで創刊編集長の白井勝也さんに出会う。「めぞん一刻」や「美味しんぼ」を手がけ、後に伝説的漫画編集者と呼ばれる人物だ。小学館副社長まで務め、いまもウェブ漫画の発行会社を経営している。駆け出しの漫画編集者は折に触れ、白井さんの言葉を聞いた。
「そんなの無理っす」が第一感、でも編集者なら…
「無理かどうかはやってみな…